ウは宇宙船のウ

やっぱりブラッドベリはいいなあ。SF作家らしからぬ多彩な文章構成と形容、出版から40年近く経つってなお人の心の懐かしさを擽る抒情的な表現や幻想的な世界観など、読んでいてさすがブラッドベリと思わせる要素が盛り沢山だった。(特に好きな短編は「初期の終わり」「霧笛」「宇宙船乗組員」「亡命した人々」)
しかしそれだけに、邦訳のぎこちなさが非常にもったいない。あとがきを読んでみると、訳者の大西大西尹明氏はSFにはほとんど知識がないと語り、内容に関する記述も文章的特徴についてのものにとどまっている。さらにこの本の初版が1968年とかなり古い。こうした条件を考えればある程度堅い訳になるのは致し方ないのかもしれないが、ブラッドベリの文章の旨みを引き出すのにはこの翻訳ではあまりにも物足りない。諸権利や様々な制約もあって難しいのかもしれないが、初版出版から約40年、そろそろ新訳版を見たいものです、東京創元社さん。

ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)

ウは宇宙船のウ (創元SF文庫)