大エルミタージュ美術館展@東京都美術館


行って来ましたー。個人的に、今年行った展覧会の中では若冲展と同じくらい堪能出来ました。上の絵は、ルートヴィヒ・クナウス画「野原の少女」(のポスター)。


ルネサンス期の聖母から始まり、ユトリロによる20世紀初頭のモンマルトルの風景に終わるこのエルミタージュ展のテーマは「都市と自然と人びと」。3つの章立てで構成されており、章毎の簡単な解説と、特に気になった作品一覧を以下にまとめてみました(参考:本展覧会図録)。

  • Ⅰ.家庭の情景

ヨーロッパにおける家庭・家族図の原点である聖母子・聖家族による宗教画に始まる。こうしたイメージはバロック時代から次第に世俗化され、より人びとに親しみやすいものとなっていった。
家庭の内外とそこに展開する様々な光景・出来事を描いた「風俗画」が成熟した、17世紀オランダ・18世紀フランスの画家たちの作品も多く取り上げられている。特に後者では、ロココ時代に家庭的な主題が多く用いられた。

  • Ⅱ.人と自然の共生

中世のキリスト教絵画の大半は、キリストや聖母の背景は金地で閉じられていたが、ルネサンス自然主義はこれを開放し、次第に風景画として成立していく。この章では、ロマン主義的な、画家の内面真理や思想を反映させた象徴的・理想的風景も多く取り上げられている。また、これとは対照的な写実的風景の黄金時代は17世紀のオランダ絵画に見ることが出来る。20世紀の風景画はリアリズムには囚われず、フォーヴィスム的な強く鮮やかな色彩を用いたものも多い。

    • 気になった作品
      • 「夏」(フランチェスコ・バッサーノ、1570年代)
      • 「森の中の小川」(ヤーコプ・ファン・ライスダール、1665-1670年頃)
      • 「廃墟の中にいる洗濯女」(ユベール・ロベール、1760頃)
      • 「森の風景」(ジュール・デュプレ、1840年代初め)
      • 「ケニルワース城の廃墟」(ギヨーム・ヴァン・デル・ヘキト、1851年)
      • 「野原の少女」(ルートヴィヒ・クナウス、1857年)
      • 「牧場の羊」(シャルル=エミール・ジャック、1867年)
      • セーヌ川でボートをこぐ」(フェルディナント・ハイルブート、1880年頃)
      • 「ジヴェルニーの干草」(クロード・モネ1886年
      • 「果実を持つ女[エウ・ハエレ・イア・オエ]」(ポール・ゴーギャン1893年
      • 「サン=トロペの小径」(アンリ・マンギャン、1905年)
      • 「農夫の妻[全身像]」(パブロ・ピカソ、1908年)
      • 「汽車と荷船のある風景[貨物列車のある風景]」(ピエール・ボナール、1909年)
      • 「ダン・ウォードの干草、アイルランド」(ロックウェル・ケント、1926-1927年)
  • Ⅲ.都市の肖像

“都市の忠実な再現”の先駆となった17世紀オランダ絵画から、18世紀イタリアを中心に流行したヴェドゥータや近代絵画まで、「都市の肖像」と呼ぶに相応しいラインナップとなっている。客観的・地誌的な正確さに加えて、年中行事の楽しみや名所絵的な性格といった趣もある。

18世紀のヴェドゥータ(都市景観図)のように写実的に、あるいはクロード・ロランやラインハルトの絵画のように理想的に、都市・農村に生きる人びとやその風景を描いた作品群により、中世〜近代におけるヨーロッパ都市文明と自然の共生の歴史を俯瞰出来たように思います。


また、今展ではマティスとルソーによる同じ「リュクサンブール公園」を舞台にした作品がそれぞれ展示されていますが、出来映えは全く趣を異にしています。
五感を活かし風景を取り入れ、様々な思索を重ねたあげくキャンバスにアウトプットされる画家それぞれの『風景』。人の感じ方にも実に百人百色の差があるものだなあ、と改めて実感した次第です。


さらに今回新しく発見出来たのが『廃墟』の魅力。ユベール・ロベール画「廃墟の中にいる洗濯女」やギヨーム・ヴァン・デル・ヘキト画「ケニルワース城の廃墟」(写真下、図録より)が特に印象的でした。

何というか、廃墟って歴史的なロマンが漂ってますよね。以下は、図録に載っていたウォルター・スコット著「ケニルワース」の一節。

「この堂々たる城では、いまやすべてが廃れてしまった。湖はイグサが繁茂する沼地にすぎず、巨大な城の遺跡は、かつての壮大さをしのばせ、黙想する訪問者に人間が所有するもののはかなさと、つましい生活に満ち足りている人たちの幸せを印象づける役目しか果たしていない」

こういうところに惹かれるあたり、つくづく歴史好きな自分を再認してしまいます(サガシリーズでも一番好きなのはサガフロ2だし・・・)w